放課後等デイサービス
ガイドライン

厚生労働省
放課後等デイサービス ガイドライン

総括

1. ガイドラインの趣旨

放課後等デイサービスは平成24年4月に児童福祉法(昭和22年法律第164号)に位置づけられた新たな支援であり、その提供が開始されてから間もないこともあって、利用する子どもや保護者のニーズは様々で、提供される支援の内容は多種多様であり、支援の質の観点からも大きな開きがあるとの指摘がなされている状況にある。

このような状況を踏まえて、平成26年7月に取りまとめられた障害児支援の在り方に関する検討会報告書「今後の障害児支援の在り方について」において、「支援の一定の質を担保するための全国共通の枠組みが必要であるため、障害児への支援の基本的事項や職員の専門性の確保等を定めたガイドラインの策定が必要」、「特に、平成24年度に創設した放課後等デイサービスについては、早期のガイドラインの策定が望まれる」との提言がなされたところである。

現在の放課後等デイサービスの提供形態の多様性に鑑みれば、「放課後等デイサービスはこうあるべき」ということについて、特定の枠にはめるような形で具体性をもって示すことは技術的にも困難であり、支援の多様性自体は否定されるべきものではない。

しかしながら、提供される支援の形態は多様であっても、障害のある学齢期の子どもの健全な育成を図るという支援の根幹は共通しているはずであり、したがって、放課後等デイサービスを提供する事業所が、その支援の質の向上のために留意しなければならない基本的事項もまた共通するはずである。

本ガイドラインは、以上のような考えに基づき、放課後等デイサービスを実施するに当たって必要となる基本的事項を示すものであるが、ここに記載されている内容を機械的に実行していけば質の高い支援提供が確保されるというような、手取り足取りの事業マニュアルではない。各事業所は、本ガイドラインの内容を踏まえつつ、各事業所の実情や個々の子どもの状況に応じて不断に創意工夫を図り、提供する支援の質の向上に努めなければならない。

本ガイドライン並びに別添の「事業者向け放課後等デイサービス自己評価表」及び「保護者等向け放課後等デイサービス評価表」は、放課後等デイサービス事業所における自己評価の際に活用されることを想定しており、各事業所は自己評価の結果を踏まえて、事業運営の改善を図るとともに、結果についても利用者や保護者に向けて公表するよう努めなければならない。

また、上述のとおり、放課後等デイサービスは、その提供が開始されてから間もなく、行われている支援の内容は多種多様であり、現在においても日々新たな支援形態が生み出されているものと想像される。このような状況に鑑みれば、本ガイドラインが多くの専門家、関係団体等の協力を得て策定されたものであるにしても、その内容については不断の見直しによる改善が図られるべきものである。各事業所が本ガイドラインを活用して自己評価を実施するに際して、本ガイドライン自体の問題点に気づくことが想定されるところであり、今後、そうした気づき等を丁寧に拾いあげて本ガイドラインを更新していくことが求められる。各事業所の不断の努力による支援の質の向上とあいまって、本ガイドラインの内容もまた向上させていかなければならないものである。

2. 放課後等デイサービスの基本的役割

放課後等デイサービスは、児童福祉法第6条の2の2第4項の規定に基づき、学校(幼稚園及び大学を除く。以下同じ。)に就学している障害児に、授業の終了後又は休業日に、生活能力の向上のために必要な訓練、社会との交流の促進その他の便宜を供与することとされている。

放課後等デイサービスは、支援を必要とする障害のある子どもに対して、学校や家庭とは異なる時間、空間、人、体験等を通じて、個々の子どもの状況に応じた発達支援を行うことにより、子どもの最善の利益の保障と健全な育成を図るものである。

放課後等デイサービスの提供に当たっては、子どもの地域社会への参加・包容(インクルージョン)を進めるため、他の子どもも含めた集団の中での育ちをできるだけ保障する視点が求められるものであり、放課後等デイサービス事業所においては、放課後児童クラブや児童館等の一般的な子育て支援施策を、専門的な知識・経験に基づきバックアップする「後方支援」としての位置づけも踏まえつつ、必要に応じて放課後児童クラブ等との連携を図りながら、適切な事業運営を行うことが求められる。

さらに、一般的な子育て支援施策を利用している障害のある子どもに対して、保育所等訪問支援を積極的に実施する等、地域の障害児支援の専門機関としてふさわしい事業展開が期待されている。

放課後等デイサービスは、保護者が障害のある子どもを育てることを社会的に支援する側面もあるが、より具体的には…

  1. 子育ての悩み等に対する相談を行うこと
  2. 家庭内での養育等についてペアレント・トレーニング等活用しながら子どもの育ちを支える力をつけられるよう支援すること
  3. 保護者の時間を保障するために、ケアを一時的に代行する支援を行うことにより、保護者の支援を図るものであり、これらの支援によって保護者が子どもに向き合うゆとりと自信を回復することも、子どもの発達に好ましい影響を及ぼすものと期待される。

3. 放課後等デイサービスの提供に当たっての基本的姿勢と基本活動

放課後等デイサービスの提供に際しては、子どもの最善の利益を考慮し、人権に配慮した支援を行うために、子どもの支援に相応しい職業倫理を基盤として職務に当たらなければならない。
放課後等デイサービスの対象は、心身の変化の大きい小学校や特別支援学校の小学部から高等学校等までの子どもであるため、この時期の子どもの発達過程や特性、適応行動の状況を理解した上で、コミュニケーション面で特に配慮が必要な課題等も理解し、一人ひとりの状態に即した放課後等デイサービス計画(=個別支援計画)に沿って発達支援を行う。

放課後等デイサービスでは、子どもの発達過程や障害種別、障害特性を理解している者による発達支援を通じて、子どもが他者との信頼関係の形成を経験できることが必要であり、この経験を起点として、友達とともに過ごすことの心地よさや楽しさを味わうことで、人と関わることへの関心が育ち、コミュニケーションをとることの楽しさを感じることができるように支援する。また、友達と関わることにより、葛藤を調整する力や、主張する力、折り合いをつける力が育つことを期待して支援する。基本活動には、子どもの自己選択や自己決定を促し、それを支援するプロセスを組み込むことが求められる。

また、日常的な子どもとの関わりを通じて、保護者との信頼関係を構築し、保護者が子どもの発達に関して気兼ねなく相談できる場になるよう努める。

放課後等デイサービスは、子どもに必要な支援を行う上で、学校との役割分担を明確にし、学校で作成される個別の教育支援計画3等と放課後等デイサービス計画を連携させる等により、学校と連携を積極的に図ることが求められる。
また、不登校の子どもについては、学校や教育支援センター、適応指導教室等の関係機関・団体や保護者と連携しつつ、本人の気持ちに寄り添って支援していく必要がある。

①の基本的姿勢を踏まえ、子ども一人ひとりの放課後等デイサービス計画に沿って、下記の基本活動を複数組み合わせて支援を行うことが求められる。

ア 自立支援と日常生活の充実のための活動

子どもの発達に応じて必要となる基本的日常生活動作や自立生活を支援するための活動を行う。子どもが意欲的に関われるような遊びを通して、成功体験の積み増しを促し、自己肯定感を育めるようにする。将来の自立や地域生活を見据えた活動を行う場合には、子どもが通う学校で行われている教育活動を踏まえ、方針や役割分担等を共有できるように学校との連携を図りながら支援を行う。

イ 創作活動

創作活動では、表現する喜びを体験できるようにする。日頃からできるだけ自然に触れる機会を設け、季節の変化に興味を持てるようにする等、豊かな感性を培う。

ウ 地域交流の機会の提供

障害があるがゆえに子どもの社会生活や経験の範囲が制限されてしまわないように、子どもの社会経験の幅を広げていく。他の社会福祉事業や地域において放課後等に行われている多様な学習・体験・交流活動等との連携、ボランティアの受入れ等により、積極的に地域との交流を図っていく。

エ 余暇の提供

子どもが望む遊びや自分自身をリラックスさせる練習等の諸活動を自己選択して取り組む経験を積んでいくために、多彩な活動プログラム4を用意し、ゆったりとした雰囲気の中で行えるように工夫する。

4. 事業所が適切な放課後等デイサービスを提供するために必要な組織運営管理

放課後等デイサービス事業所が適切な支援を安定的に提供することにより、障害のある子どもの健全な育成に貢献するとともに、子どもや保護者の満足感、安心感を高めるためには、組織運営管理を適切に行う必要がある。

  • 事業所の運営方針や、放課後等デイサービス計画、日々の活動に関するタイムテーブル5や活動プログラムについて、その Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Act(改善)で構成される一連のプロセス(PDCAサイクル)を、設置者・管理者、児童発達支援管理責任者、従業者(児童発達支援管理責任者以外の従業者をいう。以下同じ。)(以下「従業者等」と総称する。)の積極的な関与のもとで繰り返し、事業所が一体となって不断に支援の質の向上を図ることが重要である。
  • 適切な支援を安定的に提供するとともに、支援の質を向上させるためには、支援に関わる人材の知識・技術を高めることが必要であり、そのためには様々な研修の機会を確保するとともに、知識・技術の習得意欲を喚起することが重要である。
  • 子どもの発達支援には、保護者や学校をはじめとする様々な関係者が関与しており、それらの関係者と密に連携し、情報を共有することにより、子どもに対する理解を深めるとともに、支援の輪の中において放課後等デイサービス事業所に期待される役割を適切に認識することも、適切な支援を提供し、支援の質を高めていく上で重要である。
  • 子どもや保護者の満足感、安心感を高めるためには、提供する支援の内容を保護者とともに考える姿勢を持ち、子どもや保護者に対する丁寧な説明を常に心がけ、子どもや保護者の気持ちに寄り添えるように積極的なコミュニケーションを図ることが重要である。
  • 子どもが健全に発達していくためには、地域社会とのふれあいが必要であり、そうした観点からは放課後等デイサービス事業所が地域社会からの信頼を得ることが重要であるが、そのためには地域社会に対して事業に関する情報発信を積極的に行う等、地域に開かれた事業運営を心がけることが求められる。
  • 子どもや保護者が安心して放課後等デイサービス事業所の支援を受け続けられるようにするためには、事業を運営する中で想定される様々なリスク、例えば、子どもの健康状態の急変、非常災害、犯罪、感染症の蔓延等に対する、訓練や対応マニュアルの策定、関係機関・団体との連携等により、日頃から十分に備えることが重要である。
  • 子どもの虐待の未然防止や個人情報保護を徹底する等、関係法令を確実に遵守することは、子どもの権利擁護の観点や、子どもや保護者を継続的に支援していく観点からも非常に重要である。

設置者・管理者向けガイドライン

設置者・管理者は、放課後等デイサービスの運営状況の全体を把握し、事業を円滑に進める役割、児童発達支援管理責任者及び従業者の意識形成や効率的な配置を行う役割並びに学校や地域の関係機関・団体との連携を図る役割が求められる。

設置者・管理者は、その事業所が提供する放課後等デイサービスの質の評価を行うことはもとより、第三者による外部評価の導入等を通じて、常にその改善を図らなければならない。

1. 子どものニーズに応じた適切な支援の提供と支援の質の向上

ア 適正な規模の利用定員

  •  設備、従業者等の状況を総合的に勘案し、適切な生活環境と事業内容が確保されるよう、子どもの情緒面への配慮や安全性の確保の観点から、適正な利用定員を定めることが必要である。

イ 適切な職員配置

  • 放課後等デイサービス事業所においては、指導員又は保育士、児童発達支援管理責任者、機能訓練担当職員(機能訓練を行う場合)の配置が必須であり、重症心身障害児に対して放課後等デイサービスを行う場合は、指導員又は保育士に替えて、児童指導員又は保育士、さらに嘱託医、看護師、機能訓練担当職員の配置を行い、医療的ケア等の体制を整える必要がある。
  • 常時見守りが必要な子どもへの支援等のために、必要に応じて指導員又は保育士を人員配置基準を上回って配置することも考慮する必要がある。
  • 児童発達支援管理責任者が個々の子どもについて作成する放課後等デイサービス計画に基づき、適切な知識と技術をもって活動等が行われるよう、支援の単位ごとに、従業者を統括する指導的役割の職員が配置されている必要があり、この職員には児童指導員等の資格を保有する者を充てる等、支援の質の確保の視点から、適切な職員配置に留意する必要がある。
  • 設置者・管理者は、職員一人ひとりの倫理観及び人間性を把握し、職員としての適性を適確に判断する責任がある。
  • 質の高い支援を確保する観点から、従業者等が心身ともに健康で意欲的に支援を提供できるよう、労働環境の整備に努める。

ウ 適切な設備等の整備

  • 放課後等デイサービス事業所は、放課後等デイサービスを提供するための設備及び備品を適切に備えた場所である必要がある。様々な障害のある子どもが安全に安心して過ごすことができるようバリアフリー化や情報伝達への配慮等、個々の子どもの態様に応じた工夫が必要である。
  • 放課後等デイサービス事業所の指導訓練室については、床面積の基準は定められていないが、児童発達支援センターが児童発達支援事業を行う場合においては子ども一人当たり2.47㎡の床面積が求められていることを参考としつつ、適切なスペースを確保することが望ましい。
  • 子どもが生活する空間については、指導訓練室のほか、おやつや学校休業日に昼食がとれる空間、静かな遊びのできる空間、雨天等に遊びができる空間、子どもが体調の悪い時等に休息できる静養空間、年齢に応じて更衣のできる空間等を工夫して確保することが必要である。
    室内のレイアウトや装飾にも心を配り、子どもが心地よく過ごせるように工夫することが望ましい。
  • 屋外遊びを豊かにするため、屋外遊技場の設置や、学校と連携して校庭等を利用したり、近隣の児童遊園・公園等を有効に活用することが望ましい。
  • 備品については、遊具のほか、障害種別、障害特性及び発達状況に応じた支援ツールを備えることも考慮していくことが必要である。

設置者・管理者は、PDCAサイクルを繰り返すことによって、継続的に事業運営を改善する意識を持って、児童発達支援管理責任者及び従業者の管理及び事業の実施状況の把握その他の管理を行わなければならない。

ア 事業運営の理念・方針の設定・見直しと職員への徹底

  • 放課後等デイサービス事業所ごとに、運営規程を定めておくとともに、児童発達支援管理責任者及び従業者に運営規程を遵守させておかなければならない。運営規程には以下の重要事項は必ず定めておく必要がある。

【運営規程の重要事項】

    • 事業の目的及び運営の方針
    • 従業者の職種、員数及び職務の内容
    • 営業日及び営業時間
    • 利用定員
    • 放課後等デイサービスの内容並びに保護者から受領する費用の種類及びその額
    • 通常の事業の実施地域
    • サービスの利用に当たっての留意事項
    • 緊急時等における対応方法
    • 非常災害対策
    • 事業の主たる対象とする障害の種類を定めた場合には当該障害の種類
    • 虐待の防止のための措置に関する事項
    • その他運営に関する重要事項
  • 事業の目的及び運営方針は、本ガイドラインの総則に記載されている放課後等デイサービスの基本的役割、基本的姿勢や、地域での子どもや保護者の置かれた状況、放課後等デイサービス事業が公費により運営される事業であること等を踏まえ、適切に設定する。
  • 事業の目的及び運営方針の設定や見直しに当たっては、児童発達支援管理責任者及び従業者が積極的に関与できるように配慮する。
  • 児童発達支援管理責任者及び従業者の採用に当たっては、事業所の目的及び運営方針を始めとした運営規程の内容を丁寧に説明するとともに、様々な機会を通じて繰り返しその徹底を図る。

イ 複数のサイクル(年・月等)での目標設定と振り返り

  • PDCAサイクルにより不断に業務改善を進めるためには、児童発達支援管理責任者及び従業者が参画して、複数のサイクル(年間のほか月間等)で事業所としての業務改善の目標設定とその振り返りを行うことが望ましい。
    年間の振り返りに当たっては、本ガイドラインに基づく自己評価を実施し、その結果を事業運営に反映させ、自己評価結果については事業所の会報やホームページ等で公表するよう努めるものとする。
  • 可能な限り第三者による外部評価を導入して、事業運営の一層の改善を図る。

ウ コミュニケーションの活性化等

  • PDCAサイクルによる業務改善が適切に効果を上げるには、現状の適切な認識・把握と、事業所内での意思の疎通・情報共有が重要である。
  • サービス提供の日々の記録については、児童発達支援管理責任者が掌握する以外に、従業者同士での情報共有を図ることも支援の質の向上のために有用である。職場での何でも言える雰囲気作りや職員同士のコミュニケーションの活性化も設置者・管理者の役割である。
  • 放課後等デイサービス計画の作成・モニタリング・変更の結果について、児童発達支援管理責任者から報告を受ける等、児童発達支援管理責任者や従業者の業務の管理及び必要な指揮命令を行う。
  • 支援内容の共有や職員同士のコミュニケーションの活性化が事業所内虐待の防止や保護者による虐待の早期発見に繋がるものであることも認識しておくとともに、設置者・管理者も、適切な支援が提供されているか掌握しておく必要がある。

エ 子どもや保護者の意向等の把握

  • PDCAサイクルによる業務改善を進める上で、支援を利用する子ども及び保護者の意向や満足度を把握することが必要であり、例えばアンケート調査を実施して、意向等を把握することが考えられる。
  • 子ども及び保護者の意向等を踏まえて行うこととした業務改善への取組については、子ども及び保護者に周知することが望ましい。

オ 支援の継続性

  • 放課後等デイサービスは、子どもや保護者への支援の継続性の観点から継続的・安定的に運営することが望ましい。やむを得ず事業を廃止し又は休止しようとする時は、一月前までに都道府県知事等に届け出なければならない。

    この場合、子どもや保護者に事業を廃止又は休止しようとする理由を丁寧に説明するとともに、他の放課後等デイサービス事業所等を紹介する等、子どもや保護者への影響が最小限に抑えられるように対応することが必要である。

ア 従業者等の知識・技術の向上意欲の喚起

  • 児童発達支援管理責任者及び従業者の知識・技術の向上は、放課後等デイサービスの提供内容の向上に直結するものであり、児童発達支援管理責任者及び従業者の知識・技術の向上への取組は、設置者・管理者の重要な管理業務の一つである。
  • 設置者・管理者は、従業者等の資質の向上の支援に関する計画を策定し、その計画に係る研修の実施又は研修の機会を確保することが望ましい。資質の向上の支援に関する計画の策定に際しては、児童発達支援管理責任者や従業者を積極的に参画させることが望ましい。
  • 放課後等デイサービスを適切に提供する上で、放課後等デイサービスに期待される役割、子どもの発達段階ごとの特性、障害種別・障害特性、関連する制度の仕組み、関係機関・団体の役割、児童虐待への対応、障害者の権利に関する条約の内容等を理解することが重要であり、児童発達支援管理責任者及び従業者に対してこうした知識の習得に向けた意欲を喚起する必要がある。
  • 障害種別、障害特性に応じた支援や発達段階に応じた支援、家族支援等に係る適切な技術を従業者が習得することが、子どもの発達支援や二次障害の予防、家庭養育を支えるといった視点から重要であり、児童発達支援管理責任者及び従業者に対してこうした技術の習得に向けた意欲を喚起する必要がある。

イ 研修受講機会等の提供

  • 設置者・管理者は、従業者等の資質向上を図るため、研修を実施する等の措置を講じなければならない。
    具体的には自治体や障害児等関係団体が実施する研修等への児童発達支援管理責任者及び従業者の参加、事業所における勉強会の開催、事業所に講師を招いての研修会の実施、児童発達支援管理責任者及び従業者を他の事業所等に派遣しての研修、事業所内における児童発達支援管理責任者及び従業者の自己研鑽のための図書の整備等が考えられる。
  • 児童発達支援管理責任者は、従業者に対する技術指導及び助言を行うことも業務となっており、設置者・管理者は、事業所内における研修の企画等に当たっては、児童発達支援管理責任者と共同して対応していくことが望まれる。

ア 相談支援事業者との連携

  • 障害児相談支援事業所が作成する障害児支援利用計画は、相談支援専門員が総合的な援助方針や解決すべき課題を踏まえ最も適切なサービスの組合せ等について検討し、子ども又は保護者の同意のもと作成するものである。

    放課後等デイサービス事業所の放課後等デイサービス計画は、児童発達支援管理責任者が、障害児支援利用計画における総合的な援助方針等を踏まえ、当該事業所が提供するサービスの適切な支援内容等について検討し、子ども又は保護者の同意のもと作成するものである。両計画が連動して機能することによって、子どもに対する支援がより良いものとなっていくものであり、設置者・管理者はこの連動の重要性を認識しておく必要がある。
  • 障害児相談支援事業所の相談支援専門員が開催するサービス担当者会議の招集に対し、設置者・管理者は従業者あるいは児童発達支援管理責任者のうち、当該子どもの状況に精通した最もふさわしい者を参画させなければならない。
  • サービス担当者会議は、障害児支援利用計画案に位置付けられた福祉サービス等の担当者が、障害児支援利用計画案の内容について、専門的な見地からの意見を述べるものである。

    サービス担当者会議に参画する担当者は、障害児支援利用計画案に位置づけられた放課後等デイサービス事業所に期待される役割を確認するとともに、障害のある子どもが、他の子どもや地域社会から安易に切り離されないための配慮等、子どもの最善の利益の観点から意見を述べることが重要である。障害児支援利用計画のモニタリング時には、その時点までの放課後等デイサービスの提供状況を踏まえて、課題への達成度や気づきの点等の情報を積極的に述べることが重要である。

    設置者・管理者は担当者をサービス担当者会議に参画させるに当たっては、このような役割を明確に認識しておく必要がある。

イ 学校との連携

  • 子どもに必要な支援を行う上で、学校との役割分担を明確にし、連携を積極的に図る必要がある。
  • 年間計画や行事予定等の交換、子どもの下校時刻の確認、引継ぎの項目等、学校との間で情報を共有しておく必要がある。
  • 送迎を行う場合には、子どもの安全確保に留意することは当然であるが、特に学校の授業終了後の迎えに当たっては、他の事業所の車両の発着も想定されることから、事故等が発生しないよう細心の注意を払う必要がある。

    このため、設置者・管理者は、送迎時の対応について学校と事前に調整しておくことが必要である。
  • 下校時のトラブルや子どもの病気・事故の際の連絡体制(緊急連絡体制や対応マニュアル等)について、事前に学校と調整し、児童発達支援管理責任者や送迎を担当する従業者に対し徹底しておく必要がある。
  • 学校との間で相互の役割の理解を深めるため、
    1. 保護者の同意を得た上で、学校に配置されている外部との関係機関・団体との調整の役割を担っている特別支援教育コーディネーター等から個別の教育支援計画等についての情報提供を受けるとともに、放課後等デイサービス事業所の放課後等デイサービス計画を特別支援教育コーディネーター等へ提供する。
    2. 個別の教育支援計画が作成されていない子どもにあっては、保護者の同意を得た上で特別支援教育コーディネーター等とお互いの支援内容等の情報交換の連絡をとれるよう調整しておく。
    3. 学校の行事や授業参観に児童発達支援管理責任者と分担して積極的に参加する等の対応をとることが望ましい。

ウ 医療機関や専門機関との連携

  • 子どもの事故やケガ、健康状態の急変が生じた場合に備え、近隣の協力医療機関をあらかじめ定めておく必要がある。
  • 医療的なケアが必要な子どもを受け入れる場合は、子どもの主治医等との連携体制を整えておく必要がある。
  • 障害種別や障害特性の理解や、障害種別や障害特性に応じた活動や支援方法に関すること、支援困難事例等については、児童発達支援センターや発達障害者支援センター等の専門機関から助言や研修を受けること等により連携を図りながら適切な支援を行っていく必要がある。
  • 保護者による子ども虐待のケースについては、児童相談所、市区町村の児童虐待対応窓口や保健所等の関係機関・団体と連携して対応を図る必要がある。

エ 保育所・児童発達支援事業所等との連携

  • 子どもの発達支援の連続性を保障するため、就学前に利用していた保育所や幼稚園、認定こども園や児童発達支援事業所等と連携し、情報の共有と相互理解に努めることが重要である。
  • 放課後等デイサービスで行われていた支援内容等の情報を提供する等、学校卒業後に関わる障害福祉サービス事業所等と連携することが必要である。

オ 他の放課後等デイサービス事業所等との連携

  • 発達支援上の必要性により、他の放課後等デイサービス事業所等を併せて利用する子どもについて、支援内容を相互に理解しておくため、保護者の了解を得た上で、当該他の事業所との間で、相互の個別支援計画の内容等について情報共有を図ることが必要である。

カ 放課後児童クラブや自治会等との連携

  • 放課後児童クラブの放課後児童支援員等や放課後子供教室関係者等が障害のある子どもへの対応に不安を抱える場合等については、放課後等デイサービスとの併行利用や、保育所等訪問支援等の積極的活用を図る等、放課後児童クラブ等と連携を図りながら、子どもと放課後児童支援員等に対して、適切な支援を行っていくことが重要である。
  • 障害のある子どもができるだけ地域や他の子どもから切り離されないよう、地域の放課後児童クラブや放課後子供教室、児童館との交流や他の子どもとの活動を企画することが望ましい。
  • 日頃から地域の行事や活動に参加できる環境を作るため、自治会の会合に参加することや、地域のボランティア組織と連絡を密にする等の対応をとることが望ましい。

キ (地域自立支援)協議会等への参加

  • アからカまでに記載した関係機関・団体との連携を円滑なものとするため、設置者・管理者又は児童発達支援管理責任者は、(地域自立支援)協議会子ども部会等へ積極的に参加すること等により、関係機関・団体との関係性を構築しておく必要がある。
  • 虐待等により福祉的介入が必要とされるケースについては、市区町村等が設置する要保護児童対策地域協議会等へ参加する。

ク 保護者との連携

  • 学校への子どもの出欠や帰宅の状況について、保護者との連絡により確実に確認することが必要である。
    このため、設置者・管理者は、送迎時の対応について保護者と事前に調整しておくことが必要である。また、下校時のトラブルや子どもの病気・事故の際の連絡体制について、事前に保護者と調整し、児童発達支援管理責任者や送迎を担当する従業者に対し徹底しておく必要がある。
  • 日頃から子どもの状況を保護者と伝え合い、子どもの発達の状況や課題について共通理解を持つことが重要である。
  • このため、設置者・管理者は、児童発達支援管理責任者及び従業者が行う保護者への連絡や支援について、随時報告を受けることや記録の確認等により、把握・管理するよう努める必要がある。
  • 家庭内での養育について、保護者に対して、子どもの育ちを支える力をつけるためのペアレント・トレーニングや環境整備等の支援を必要に応じて児童発達支援管理責任者や従業者に実施させることが望ましい。

2. 子どもと保護者に対する説明責任等

設置者・管理者は、子どもと保護者が放課後等デイサービスを適切かつ円滑に利用できるよう、説明責任を果たすとともに必要な支援を行う責務がある。

  • 運営規程については事業所内の見やすい場所に掲示する等によりその周知を図る。
  • 子どもと保護者には、利用申込時において、運営規程や支援の内容を理解しやすいように説明し、特に、利用者負担について丁寧に説明を行う必要があるため、児童発達支援管理責任者にも徹底しておく。
  • 保護者からの相談に適切に応じるとともに、必要な助言と支援を行うことも必要である。
    例えば、保護者との定期的な面談(最低限モニタリング時に実施することが望ましい)や訪問相談等を通じて、子育ての悩み等に対する相談を行ったり、子どもの障害について保護者の理解が促されるような支援を行うことが望ましい。
  • 設置者・管理者は、児童発達支援管理責任者及び従業者に対して、保護者との定期的な面談や保護者に対する相談支援について、その適切な実施を促すとともに、随時報告を受けることや記録の確認等により、把握・管理する必要がある。
  • 父母の会の活動を支援したり、保護者会等を開催したりすることにより、保護者同士のつながりを密にして、安心して子育てを行っていけるような支援を行うことも望まれる。家族支援は、保護者に限った支援ではなく、きょうだいや祖父母への支援も含まれる。特にきょうだいは、心的負担等から精神的な問題を抱える場合も少なくないため、例えば、きょうだい向けのイベントを開催する等の対応を行うことが望ましい。
  • 放課後等デイサービスに対する子どもや保護者からの苦情について、迅速かつ適切に対応するために、苦情(虐待に関する相談も含む)を受け付けるための窓口や苦情受付担当者、苦情解決責任者、第三者委員の設置、解決に向けた手順の整理等、迅速かつ適切に解決が図られる仕組みを構築することが求められる。
  • 苦情受付窓口については、子どもや保護者に周知するとともに、第三者委員を設置している場合には、その存在についても、子どもや保護者に周知する。
  • 設置者・管理者は、苦情解決責任者として、迅速かつ適切に対応する。
  • 事業所は定期的に会報等を発行し、活動概要や行事予定、連絡体制等の情報を子どもや保護者に対して発信することが必要である。
  • 視覚障害や聴覚障害等の障害種別に応じて、設備・備品への配慮のほか、子どもや保護者との意思の疎通、情報伝達のための手話等による配慮が必要である。
  • 地域住民の事業所に対する理解の増進や地域の子どもとしての温かい見守り、地域住民との交流活動の円滑な実施等の観点から、事業所はホームページや会報等を通じて活動の情報を積極的に発信することや、事業所の行事に地域住民を招待する等地域に開かれた事業運営を図ることが必要である。
  • 実習生やボランティアの受入れは、事業所及び実習生やボランティア双方にとって有益であり、積極的に対応することが望ましい。ただし、実習生やボランティアの受入れに当たっては、事故が起きないよう適切な指導を行う等の対応が必要である。また、実習生やボランティアの受入れにあたっては、事業所の理念やプログラム内容及びそれぞれの子どもの支援上の注意事項等を理解させることが必要である。

3. 緊急時の対応と法令遵守等

  • 子どもの事故やケガ、健康状態の急変が生じた場合は、速やかに保護者、協力医療機関及び主治医に連絡を行う等の必要な措置を講じなければならない。
    緊急時における対応方法について、「緊急時対応マニュアル」策定と児童発達支援管理責任者及び従業者への周知が必要である。
  • 設置者・管理者は、非常災害に備えて消火設備等の必要な設備を設けるとともに、非常災害に関する具体的計画を立て、非常災害時の避難方法や、関係機関・団体への通報及び連絡体制を明確にするとともに、それらを定期的に児童発達支援管理責任者及び従業者や保護者に周知しなければならない。
  • 非常災害の発生に備え、定期的に避難、救出その他必要な訓練を行わなければならない。
  • 重大な災害の発生や台風の接近等により危険が見込まれる場合、特に教育委員会や学校が休校や下校時刻を早める等の判断を発表した場合には、子どもの安全確保のために状況に応じて休所とする等適切な対処をするとともに、保護者や学校等関係機関・団体との連絡体制を構築しておく必要がある。
  • 障害種別や障害特性ごとの災害時対応について理解しておき、子どもごとの放課後等デイサービス計画に災害時の対応について記載させることも考慮する。

    特に医療的ケアが必要な子どもについては、保護者や主治医等との間で災害発生時の対応について、綿密に意思疎通を図っておくことが重要であり、児童発達支援管理責任者及び従業者に徹底する。
  • 子どもが犯罪に巻き込まれないよう、事業所として防犯マニュアルの策定や、地域の関係機関・団体等と連携しての見守り活動、子ども自身が自らの安全を確保できるような学習支援等の防犯への取組が必要である。
  • 設置者・管理者は、児童発達支援管理責任者及び従業者による子どもに対する虐待を防止するため、虐待防止委員会の設置等、必要な体制の整備が求められる。
    虐待防止委員会の責任者は、通常、管理者が担うこととなる。虐待防止委員会を組織的に機能させるために、苦情解決の第三者委員等の外部委員を入れてチェック機能を持たせるとともに、児童発達支援管理責任者等、虐待防止のリーダーとなる職員を虐待防止マネージャーとして配置し、研修や虐待防止チェックリストの実施等、具体的な虐待防止への取組を進める。
  • 設置者・管理者は、児童発達支援管理責任者及び従業者に対する虐待防止啓発のための定期的な研修を実施し、又は自治体が実施する研修を受講させるほか、自らが虐待防止のための研修を積極的に受講する等により、児童虐待防止等に関する法律(平成12年法律第82号。以下、「児童虐待防止法」という。)及び障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律(平成23年法律第79号。以下「障害者虐待防止法」という。)について理解し、虐待の防止への取組を進める必要がある。特に、「障害者福祉施設・事業所における障害者虐待の防止と対応の手引き」は必ず読むようにする。

    各都道府県で実施する虐待防止や権利擁護に関する研修を受講した場合には、放課後等デイサービス事業所で伝達研修を実施することが重要である。
  • 児童発達支援管理責任者及び従業者が、虐待を発見しやすい立場にあることを認識し、子どもの状態の変化や保護者の態度等の観察や情報収集により、虐待の早期発見に努めさせる必要がある。
  • 従業者等(実習生やボランティアを含む。)からの虐待(特に性的虐待)は、密室化した場所で起こりやすいことから、送迎の車内を含め、密室化した場所を極力作らないよう、常に周囲の目が届く範囲で支援を実施する必要がある。
  • 従業者等(実習生やボランティアを含む。)からの虐待を受けたと思われる子どもを発見した場合(相談を受けて虐待と認識した場合を含む。)は、障害者虐待防止法第 16 条に規定されている通報義務に基づき、通所給付決定をした市区町村の窓口に通報する。この時に、市区町村に通報することなく、事業所の中だけで事実確認を進め、事態を収束させてしまうと通報義務に反することとなるため、必ず市区町村に通報した上で行政と連携して対応を進める必要がある。
  • 保護者による虐待については、保護者に対する相談支援やカウンセリング等により未然防止に努めることが重要であることを認識する。
  • 保護者による虐待を発見した場合は、児童虐待防止法第6条に規定されている通報義務に基づき、市区町村、都道府県の設置する福祉事務所又は児童相談所等へ速やかに通告するよう徹底する必要がある。虐待等により福祉的介入が必要とされるケースについては、市区町村等が設置する要保護児童対策地域協議会等を活用しながら、児童相談所、市区町村の児童虐待対応窓口や保健所等の関係機関・団体と連携して対応を図っていくことが求められる。
  • 従業者等(実習生やボランティアを含む。)が自分の体で利用者を押さえつけて行動を制限することや、自分の意思で開けることのできない居室等に隔離すること等は身体拘束に当たり、緊急やむを得ない場合を除き禁止されている。
  • やむを得ず身体拘束を行う場合は、切迫性、非代替性、一時性が要件となるが、身体拘束の検討が必要なケースについては、代替性がないか等について慎重に検討した上で、それでもなお、身体拘束を行わざるを得ない事態が想定される場合には、いかなる場合にどのような形で身体拘束を行うかについて組織的に決定する必要がある。児童発達支援管理責任者に対しては、放課後等デイサービス計画に、身体拘束が必要となる状況、身体拘束の態様・時間等について、子どもや保護者に事前に十分に説明をし、了解を得た上で記載させることが必要ある。
  • 身体拘束を行った場合には、行った担当者または児童発達支援管理責任者から、その様態及び時間、その際の利用者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由等必要な事項の記録とともに報告を受ける。なお、必要な記録がされていない場合は、運営基準違反となることを認識しておく必要がある。
  • 感染症の予防や健康維持のため、手洗いやうがいの励行、おやつや学校休業日における昼食の提供に係る設備の衛生管理を徹底することが必要である。
  • 子どもの来所時の健康チェック等、健康管理に必要となる器械器具の管理を適正に行うことが必要である。
  • 感染症又は食中毒の対応や排泄物又は嘔吐物に関する処理方法について、対応マニュアルを策定しておくことが必要である。
  • インフルエンザ等感染症により集団的感染のおそれがある場合、特に教育委員会や学校が休校を発表した場合は、子どもの安全確保のために状況に応じて休所とする等適切に対処するとともに、保護者や学校等関係機関・団体との連絡体制を構築しておく必要がある。
  • サービス提供中に起きる事故やケガを防止するために、室内及び屋外の環境の安全性について毎日点検し必要な補修等を行い、危険を排除するよう必要な措置を講じておく。
  • 設置者・管理者は、発生した事故事例や事故につながりそうな事例について、児童発達支援管理責任者と従業者間で共有するため、いわゆる「ヒヤリハット事例集」を作成することが望ましい。
  • 設置者は、従業者等(実習生やボランティアを含む。)または、管理者及び従業者等(実習生やボランティアを含む。)であった者が、その業務上知り得た秘密を漏らすことがないよう、誓約書の提出や雇用契約に明記する等、必要な措置を講じなければならない。
  • 関係機関・団体に子ども又は保護者に関する情報を提供する際は、あらかじめ文書により保護者の同意を得させておかなければならない。また、ホームページや会報等に子ども又は保護者の写真や氏名を掲載する際には、保護者の許諾を得ることが必要である。
  • 管理者は、その職を辞した後も含めて、正当な理由がなく業務上知り得た秘密を漏らしてはならない。

児童発達支援管理責任者向けガイドライン

児童発達支援管理責任者は、放課後等デイサービスを利用する子どもと保護者のニーズを適切に把握し、放課後等デイサービス計画を作成し、すべての従業者が放課後等デイサービス計画に基づいた支援を行っていけるように調整する。また、提供される支援のプロセスを管理し、客観的な評価等を行う役割がある。

1. 子どものニーズに応じた適切な支援の提供と支援の質の向上

ア 子どもと保護者及びその置かれている環境に対するアセスメント

  • 子どもと保護者及びその置かれている環境を理解するためには、子どもの障害の状態だけでなく、子どもの適応行動の状況(P.3 の脚注参照)を、標準化されたアセスメントツール(例えば「Vineland-Ⅱ適応行動評価尺度」の日本版)を使用する等により確認する。
    また、子どもの発育状況、自己理解、心理的課題、子どもの興味関心事となっていること、養育環境、これまで受けてきた支援、現在関わっている機関に関すること、地域とのつながり、利用に当たっての希望、将来展望等について必要な情報をとり、子どもと保護者のニーズや課題を客観的に分析する。
  • 保護者のニーズと子ども自身のニーズは必ずしも一致するわけではないので、子どものニーズを明確化していくことがまず求められる。また、発達段階にある子どものニーズは変化しやすいため、日頃から状況を適切に把握し対応していく必要がある。

イ 放課後等デイサービス計画の作成

  • 障害児相談支援事業所等が作成した障害児支援利用計画や、自らの事業所でアセスメントした情報を課題整理表等を用いて整理した上で、放課後等デイサービス計画を作成する。
  • 放課後等デイサービス計画には、子どもと保護者の生活に対する意向、総合的な支援目標とその達成時期、生活全般の質を向上させるための課題、児童発達支援の具体的内容、留意事項を含める。
  • 将来に対する見通しを持った上で、障害種別、障害特性や子どもの発達段階を丁寧に把握し、それらに応じた関わり方を考えていく。
  • 支援手法については、個別活動と集団活動をその子どもに応じて適宜組み合わせる。
  • 平日/休日/長期休暇の別等に応じて、課題をきめ細やかに設定をするように工夫しなければならない。
  • 計画の作成に際しては、従業者から放課後等デイサービス計画の原案について意見を聞く等、担当の従業者を積極的に関与させることが望ましい。

ウ タイムテーブル、活動プログラムの立案

  • 放課後等デイサービス事業所における時間をどのようにして過ごすかについて、一人ひとりの放課後等デイサービス計画を考慮し、一日のタイムテーブルを作成する。タイムテーブルは、子どもの生活リズムを大切にし、日常生活動作の習得や、子どもが見通しを持って自発的に活動できるよう促されることが期待される。ただし、提供される活動プログラムを固定化することは、経験が限られてしまうことにもなるため、活動プログラムの組合せについて、創意工夫が求められる。
  • 発達支援の時間は十分に確保されなければならず、送迎の都合で発達支援の時間が阻害されることのないようタイムテーブルを設定しなければならない。
  • 活動プログラムは、子どもの障害種別、障害特性、発達段階、生活状況や課題、平日/休日/長期休暇の別等に応じた内容を組み立て、従業者も交えながらチームで検討していく。
  • 集団活動の場合は、対象児の年齢や障害の状態の幅の広さを考慮しながら、活動プログラムを作成する必要がある。子どもの年齢や発達課題が異なることも多いことから、年齢別又は障害別、発達課題別に支援グループを分けることも考慮する必要がある。
  • 活動プログラムの内容は、本ガイドラインの総則に記載されている放課後等デイサービスの基本的役割、基本的姿勢等を十分に踏まえたものでなければならない。

エ 日々の適切な支援の提供

  • 本ガイドラインの総則に記載されている放課後等デイサービスの基本的役割、基本姿勢等について理解するとともに、従業者にその理解を徹底し、日々の支援を適切に提供する。
  • 設備、従業者等の状況を総合的に勘案し、適切な生活環境と事業内容が確保されるよう、子どもの情緒面への配慮や安全性の確保の観点から、利用定員の規模や、室内のレイアウトや装飾等に心を配り、必要に応じて設置者・管理者とも相談し、改善を図る。また、着替えや排泄の介助等については、同性介護を基本とする等、配慮することが求められる。
  • 支援開始前には従業者間で必ず打合せを実施し、その日行われる支援の内容や役割分担について把握する。
  • 従業者が放課後等デイサービス計画に沿って、それぞれの子どもたちの障害種別、障害特性、発達段階、生活状況や課題に細やかに配慮しながら支援を行えるように注意する。
  • 従業者と常に意思の疎通を図り、円滑なコミュニケーションがとれるよう努める。
  • 支援終了後の打合せを実施し、従業者にその日の支援の振り返りをさせ、子どもや保護者との関わりで気づいた点や、気になった点について従業者間で共有させる。
  • 従業者にその日行った支援に関して正しく記録をとることを徹底させる。
    従業者が行っている支援が目標や計画に沿って行われているか、記録に基づいて検証し、その改善につなげていく。

オ 放課後等デイサービス計画の実施状況把握(モニタリング)

  • 放課後等デイサービス計画は、概ね6ヶ月に1回以上モニタリングを行うことになっているが、子どもの状態や家庭状況等に変化があった場合にはモニタリングを行う必要がある。モニタリングは、目標達成度を評価して支援の効果測定していくためのものであり、単に達成しているか達成していないかを評価するものではなく、提供した支援の客観的評価を行い、放課後等デイサービス計画の見直しの必要性を判断する。

カ モニタリングに基づく放課後等デイサービス計画の変更

  • モニタリングにより、放課後等デイサービス計画の見直しの必要性が判断された場合は、放課後等デイサービス計画の積極的な見直しを行う。その際、支援目標の設定が高すぎたのか、支援内容があっていなかったのか、別の課題が発生しているのか等の視点で、これまでの支援内容を評価し、今後も支援内容を維持するのか、 変更するのかを判断していく。放課後等デイサービスの必要性が低くなった場合は、終結を検討する。なお、支援内容の変更や終結時には、設置者・管理者へ報告する。
  • 終結に当たっては、放課後等デイサービスの支援内容等について、関係機関・団体に引き継ぐことが必要である。終結に当たってのモニタリングは、障害児相談支援事業所、学校、子ども、保護者とともに行っていくことが望ましい。

キ 事業所全体の業務改善サイクルへの積極的関与

  • 事業所の目的及び運営方針をはじめとした運営規程の内容を十分に理解して職務に従事する。
  • 児童発達支援管理責任者は、PDCAサイクルによる事業所全体の業務改善の取組に積極的に関与し、事業運営方針の設定や見直し、業務改善の目標設定とその振り返り、本ガイドラインに基づく事業所の自己評価の実施や利用者の意向の把握等について協力・貢献することが求められる。
  • 放課後等デイサービスを適切に提供する上で、放課後等デイサービスが期待される役割、子どもの発達段階ごとの特性、障害種別、障害特性、関連する制度の仕組み、関係機関・団体の役割、児童虐待への対応、障害者の権利に関する条約等を理解することが重要である。
  • 障害種別、障害特性に応じた支援や発達段階に応じた支援、家族支援等に係る適切な技術を従業者が習得することが、子どもの発達支援や二次障害の予防、家庭養育を支えるといった視点から重要である。
  • 放課後等デイサービスを適切に提供する上で、児童発達支援管理責任者は、放課後等デイサービスの従業者に対して、児童発達支援の提供に関わる技術的な指導や助言を日々行うとともに、設置者・管理者と共同して、従業者に対して知識・技術の習得意欲を喚起し、事業所内における研修の企画等を行うことが望まれる。
  • 児童発達支援管理責任者は、自らも知識・技術の習得に努め、自治体等の研修を積極的に受講するよう努めるものとする。

ア 障害児相談支援事業者との連携

  • 障害児相談支援事業所が作成する障害児支援利用計画は、相談支援専門員が総合的な援助方針や解決すべき課題を踏まえ、最も適切なサービスの組合せ等について検討し、子ども又は保護者の同意のもと作成するものである。
    放課後等デイサービス事業所の放課後等デイサービス計画は、児童発達支援管理責任者が、障害児支援利用計画における総合的な援助方針等を踏まえ、当該事業所が提供するサービスの適切な支援内容等について検討し、子ども又は保護者の同意のもと作成するものである。両計画が連動して機能することによって、子どもに対する支援がより良いものとなっていくものであり、この連動の重要性を認識しておく必要がある。
  • サービス担当者会議は、障害児支援利用計画案に位置づけられた福祉サービス等の担当者が、障害児支援利用計画案の内容について、専門的な見地からの意見を述べるものである。

    サービス担当者会議に参画する場合においては、障害児支援利用計画案に位置づけられた放課後等デイサービス事業所として期待される役割を確認するとともに、障害のある子どもが、他の子どもや地域社会から安易に切り離されないための配慮等、子どもの最善の利益の観点から意見を述べることが重要である。障害児支援利用計画のモニタリング時には、その時点までの放課後等デイサービスの提供状況を踏まえて課題への達成度や気付きの点等の情報を積極的に述べることが重要である。

イ 学校との連携

  • 子どもに必要な支援を行う上で、学校との役割分担を明確にし、連携を積極的に図る必要がある。
  • 学校との間で相互の役割の理解を深めるため、
    1. 保護者の同意を得た上で、学校に配置されている外部との関係機関・団体との調整の役割を担っている特別支援教育コーディネーター等から、個別の教育支援計画等についての情報提供を受けるとともに、放課後等デイサービス事業所の放課後等デイサービス計画を特別支援教育コーディネーター等へ提供する。
    2. 個別の教育支援計画が作成されていない子どもにあっては、保護者の同意を得た上で特別支援教育コーディネーター等とお互いの支援内容等の情報交換の連絡をとれるよう調整しておく。
    3. 学校の行事や授業参観へ設置者・管理者と分担して積極的に参加する等の対応をとることが望ましい。
  • 子ども一人ひとりの個別の教育支援計画等を理解するとともに、日々学校で配慮されていること(姿勢保持の椅子等の器具、身体介助方法、声かけの方法、パニック時の対応等)について必要な情報を得て、従業者に対しても理解の徹底を図る。
  • 学校関係者がサービス担当者会議に参加できない場合は、障害児相談支援事業者とともに学校との連絡会議を開催する等、何らかの方法で連携する機会を設けることが必要である。
  • 年間計画や行事予定等の交換、子どもの下校時刻の確認等、学校との間で共有された情報を従業者と共有しておく必要がある。
  • 子どもを送迎する場合は、誰が、どの時間に、どの事業所の送迎車に載せるのかといった送迎リストやルールを作成する等、学校側に送り出しの協力をしてもらう必要があり、送迎時には、身分証明書等を学校側の担当者に見せる等、学校側の確認を取ってから、子どもを事業所に送っていくよう従業者に徹底させる。
  • 下校時のトラブルや子どもの病気・事故の際の連絡体制について、事前に把握しておく。
  • 医療的ケアの情報や、気になることがあった場合の情報等を、保護者の同意のもと、連絡ノート等を通して、学校との間で共有する。

ウ 医療機関や専門機関との連携

  • 障害種別や障害特性の理解、障害種別や障害特性に応じた活動や支援方法に関すること、支援困難事例等については、児童発達支援センターや発達障害者支援センター等の専門機関から助言や研修を受ける等により、連携を図りながら適切な支援を行っていく必要がある。
  • 保護者による子ども虐待のケースについては、児童相談所、市区町村の児童虐待対応窓口や保健所等の関係機関・団体と連携して対応を図る必要がある。

エ 保育所・児童発達支援事業所等との連携

  • 子どもの発達の連続性を保障するため、就学前に利用していた保育所、幼稚園、認定こども園や児童発達支援事業所等と連携し、保育所等や児童発達支援事業等で行われていた支援内容を把握し、従業者に当該内容を理解させる。
  • 放課後等デイサービスで行われていた支援内容等の情報を提供する等、学校卒業後に関わる障害福祉サービス事業所と連携することが必要である。

オ 他の放課後等デイサービス事業所等との連携

  • 発達支援上の必要性により、他の放課後等デイサービス事業所等を併せて利用する子どもについて、支援内容等を相互に理解しておくため、保護者の了解を得た上で、当該他の事業所等との間で、相互の個別支援計画の内容等について情報を共有し、従業者への周知を図ることが必要である。

カ 放課後児童クラブや自治会等との連携

  • 地域の放課後児童クラブや放課後子供教室と連携し、併行利用している子どもがいる場合は、情報の共有と相互理解を深めるとともに、放課後児童クラブ等で行われている支援内容を把握し、従業者への周知を図る。
  • 放課後児童クラブの放課後児童支援員等や放課後子供教室関係者等が障害のある子どもへの対応に不安を抱える場合等については、放課後等デイサービスとの併行利用や、保育所等訪問支援等の積極的活用を図る等、放課後児童クラブ等と連携を図りながら、子どもと放課後児童支援員等に対して適切な支援を行っていくことが重要である。
  • 地域に子どもたちの理解者を増やすためにも、日頃から子どもたちが地域の行事に参加したり、日常的に地域住民と同じ経験を共有する機会を積極的作るようにする。

キ (地域自立支援)協議会等への参加

  • アからカまでに記載した関係機関・団体との連携を円滑なものとするため、設置者・管理者又は児童発達支援管理責任者は、(地域自立支援)協議会子ども部会等へ積極的に参加する等により、関係機関・団体との関係性を構築しておく必要がある。
  • 虐待等により福祉的介入が必要とされるケースについては、市区町村等が設置する要保護児童対策地域協議会等へ参加する。

ク 保護者との連携

  • 学校への子どもの出欠や帰宅の状況について、保護者との連絡のもとに確実に確認することが必要である。
  • 医療的ケアの情報や、気になることがあった場合の情報等を連絡ノート等を通じて保護者と共有する等、日頃から子どもの状況を保護者と伝えあい、子どもの発達の状況や課題について共通理解を持つように努める。また、必要に応じて、家庭内での養育等についてペアレント・トレーニング等活用しながら、子どもの育ちを支える力をつけられるよう支援したり、環境整備等の支援を行ったりすることが考えられる。

2. 子どもと保護者に対する説明責任等

  • 申請時に、保護者に対して運営規程の説明を行う。特に、支援の内容、人員体制(資格等)、利用者負担、苦情処理の手順、緊急時の連絡体制等の重要事項については文書化の上、対面で説明する。
  • 放課後等デイサービス計画の内容については、その作成時、変更時に子どもと保護者に対して丁寧に説明を行う。
  • 保護者が悩み等を自分だけで抱え込まないように、保護者からの相談に応じ、信頼関係を築きながら、保護者の困惑や将来の不安を受け止め、専門的な助言を行うことも必要である。
    例えば、保護者との定期的な面談(最低限モニタリング時に実施することが望ましい)や訪問相談等を通じて、子育ての悩み等に対する相談を行ったり、子どもの障害について保護者の理解が促されるような支援を行うことが望ましい。
  • 父母の会の活動を支援したり、保護者会等を開催したりすることにより、保護者同士が交流して理解を深め、保護者同士のつながりを密にして、安心して子育てを行っていけるような支援を行うことも望まれる。家族支援は保護者に限った支援ではなく、きょうだいや祖父母等への支援も含まれる。特にきょうだいは、心的負担等から精神的な問題を抱える場合も少なくないため、例えば、きょうだい向けのイベントを開催する等の対応を行うことが望ましい。
  • 放課後等デイサービス事業所においては、子どもや保護者からの苦情について、迅速かつ適切に対応するために、苦情(虐待に関する相談も含む)を受け付けるための窓口を設置する等の必要な措置を講じる必要がある。児童発達支援管理責任者は、苦情受付担当者の役割が想定されるところであるが、子どもや保護者からの苦情受付に当たっては、職員の目を気にせず苦情を受付できるよう、苦情受付箱を設置する等、苦情受付担当者として適切にその役割を果たすことが求められる。
  • 事業所は定期的に会報等を発行し、活動概要や行事予定、連絡体制の情報を子どもや保護者に対して発信することが必要である。
  • 視覚障害や聴覚障害等障害種別に応じて、設備・備品への配慮のほか、子どもや保護者との意思の疎通、情報伝達のための手話等による配慮が必要である。

3. 緊急時の対応と法令遵守等

  • 子どもの事故やケガ、健康状態の急変が生じた場合は、事業所で作成された「緊急時対応マニュアル」に沿って、速やかに保護者、協力医療機関及び主治医への連絡を行う等の必要な措置を講じなければならない。緊急時における対応方法について、児童発達支援管理責任者は熟知しておくとともに従業者に周知徹底しておく必要がある。
  • 特に常時、医療的ケアを必要とする子どもに対しては、窒息や気管出血等、生命に関わる事態への対応を熟知しておくとともに、従業者に周知徹底しておく必要がある。
  • 児童発達支援管理責任者は、災害時避難場所や避難経路について等、非常災害に関する具体的計画について十分に熟知し、従業者の理解を徹底しておく必要がある。
  • 定期的な避難、救出その他必要な訓練では、従業者とともに訓練に当たり、問題があれば改善を図る。
  • 障害種別や障害特性ごとの災害時対応について理解しておき、子どもごとの放課後等デイサービス計画に災害時の対応について記載しておく。特に医療的ケアが必要な子どもについては、保護者や主治医等との間で災害発生時の対応について、綿密に意思疎通を図っておく。
  • 子どもが犯罪に巻き込まれないよう、事業所として防犯マニュアルの策定や、地域の関係機関・団体と連携しての見守り活動、子ども自身が自らの安全を確保できるような学習支援等の防犯への取組が必要である。
  • 児童発達支援管理責任者は、事業所の虐待防止マネージャーとして、研修や虐待防止チェックリストの実施等、具体的な虐待防止への取組を進めるとともに、自ら虐待防止研修を積極的に受講する等により、児童虐待防止法、障害者虐待防止法の趣旨と通報制度等を理解し、虐待の防止への取組を進める必要がある。特に、「障害者福祉施設・事業所における障害者虐待の防止と対応の手引き」は必ず読むようにする。各都道府県で実施する虐待防止や権利擁護に関する研修を受講した場合には、放課後等デイサービス事業所で伝達研修を実施することが重要である。
  • 児童発達支援管理責任者及び従業者が、虐待を発見しやすい立場にあることを認識し、子どもの状態の変化や保護者の態度等の観察や情報収集により、虐待の早期発見に努める必要がある。
  • 従業者等(実習生やボランティアを含む。)からの虐待(特に性的虐待)は、密室化した場所で起こりやすいことから、送迎の車内を含め、密室化した場所を極力作らないよう、常に周囲の目が届く範囲で支援を実施する必要がある。
  • 従業者等(実習生やボランティアを含む。)から虐待を受けたと思われる子どもを発見した場合(相談を受けて虐待と認識した場合を含む。)は、障害者虐待防止法第 16 条に規定されている通報義務に基づき、通所給付決定をした市区町村の窓口に通報する。この時に、市区町村に通報することなく、事業所の中だけで事実確認を進め、事態を収束させてしまうと通報義務に反することとなるため、必ず市区町村に通報した上で行政と連携して対応を進める必要がある。
  • 保護者による虐待については、相談支援やカウンセリング等で未然防止に努める必要がある。
  • 保護者による虐待を発見した場合は、児童虐待防止法第6条に規定されている通報義務に基づき、市区町村、都道府県の設置する福祉事務所又は児童相談所等へ速やかに通告する必要がある。虐待等により福祉的介入が必要とされるケースについては、市区町村等が設置する要保護児童対策地域協議会等を活用しながら、児童相談所、市区町村の児童虐待対応窓口や保健所等の関係機関・団体と連携して対応を図っていくことが求められる。
  • 従業者等(実習生やボランティアを含む。)が自分の体で利用者を押さえつけて行動を制限することや、自分の意思で開けることのできない居室等に隔離すること等は身体拘束に当たり、緊急やむを得ない場合を除き禁止されている。
  • やむを得ず身体拘束を行う場合は、切迫性、非代替性、一時性が要件となるが、身体拘束の検討が必要なケースについては、代替性がないか等について慎重に検討した上で、それでもなお、身体拘束を行わざるを得ない事態が想定される場合には、いかなる場合にどのような形で身体拘束を行うかについて組織的に決定する必要がある。放課後等デイサービス計画に身体拘束が必要となる状況、身体拘束の態様・時間等について、子どもや保護者に事前に十分に説明をし、了解を得た上で記載することが必要である。
  • 身体拘束を行った場合には、その様態及び時間、その際の利用者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由等必要な事項の記録をとることを従業者に指示しなければならない。なお、必要な記録がされていない場合は、運営基準違反となることを認識しておく必要がある。
  • 感染症の予防や健康維持のため、従業者に対し常に清潔を心がけさせ、手洗い、うがい、手指消毒の励行、換気等の衛生管理を徹底することが必要である。
  • 感染症又は食中毒が発生した場合や排泄物や嘔吐物等に関する処理方法について対応マニュアルを熟知し、マニュアルに沿って対応する。また、従業者にマニュアルの周知徹底することが必要である。
  • 食物アレルギーのある子どもについては、医師の指示書に基づき、食事やおやつ提供する際に、除去食や制限食で対応できる体制を整えることが必要である。
  • サービス提供中に起きる事故やケガを防止するために、室内や屋外の環境の安全性について毎日点検し、必要な補修等を行って、危険を排除することが必要である。
  • 児童発達支援管理責任者は、発生した事故事例や、事故につながりそうな事例の情報を収集し、ヒヤリハット事例集を作成し、従業者間で共有することが望ましい。
  • 従業者(実習生やボランティアを含む。)に対しては、秘密保持等の指導的役割を果たすことが求められる。
  • 関係機関・団体に子ども又は保護者に関する情報を提供する際は、あらかじめ文書により保護者の同意を得させておかなければならない。また、ホームページや会報等に子ども又は保護者の写真や氏名を掲載する際には、保護者の許諾を得ることが必要である。
  • 児童発達支援管理責任者は、その職を辞した後も含めて、正当な理由がなく業務上知り得た子どもや保護者の秘密を漏らしてはならない。

従業者向けガイドライン

従業者は、放課後等デイサービス計画に基づき、子どもの心身の状況に応じて、適切な技術を持って、支援を行う役割がある。

1. 子どものニーズに応じた適切な支援の提供と支援の質の向上

ア 障害児支援利用計画及び放課後等デイサービス計画の理解

  • 障害児相談支援事業所が作成する障害児支援利用計画は、相談支援専門員が総合的な援助方針や解決すべき課題を踏まえ最も適切なサービスの組合せ等について検討し、子ども又は保護者の同意のもと作成するものである。
    放課後等デイサービス事業所の放課後等デイサービス計画は、児童発達支援管理責任者が、障害児支援利用計画における総合的な援助方針等を踏まえ、当該事業所が提供するサービスの適切な支援内容等について検討し、子ども又は保護者の同意のもと作成するものである。両計画が連動して機能することによって、子どもに対する支援がより良いものとなっていくものであり、この連動の重要性を認識しておく必要がある。
  • 従業者は、放課後等デイサービス計画の作成・モニタリング・変更に際しては積極的に関与するとともに、利用している子どもの障害児支援利用計画と放課後等デイサービス計画の内容について熟知し、日々の支援を行う必要がある。

イ 従業者間での意思の疎通、支援内容の共有

  • 支援開始前には従業者間で必ず打合せを実施し、その日行われる支援の内容や、役割分担について把握する。
  • 他の従業者と常に意思の疎通を図り、円滑なコミュニケ―ションがとれるよう努める。
  • 支援終了後の打合せを実施し、その日の支援の振り返りを行い、子どもや保護者との関わりで気付いた点や気になったことについて、従業者間で共有する。

ウ 支援提供に際しての工夫

  • 従業者は、本ガイドラインの総則に記載されている放課後等デイサービスの基本的役割、基本姿勢等を十分に理解した上で支援を行う。
  • 従業者は、子どもの発達と発達支援に関する専門的知識、技術及び判断を持って、子どもの発達支援を行うとともに、保護者に対して発達支援に関するサポートを行う。
  • 従業者は、児童発達支援管理責任者が作成するタイムテーブルに沿って、それぞれの子どもたちの障害種別、障害特性、発達段階、生活状況や課題に細やかに配慮しながら支援を行う。
  • 従業者は、活動プログラムの作成に積極的に関与する。
  • 医療的ケアが必要な子どもに対して、常に体調への配慮を行う。特に重度の障害がある子どもには、活動プログラムごとに休息を交えながら支援していくよう注意する。
  • 視覚障害や聴覚障害等の障害種別に応じて、設備・備品への配慮のほか、子どもや保護者との意思の疎通、情報伝達のための手話等による配慮が必要である。

エ 支援提供記録

  • 従業者は、その日行った支援の手順、内容、利用者の反応や気付きについて、記録をとらなければならない。支援提供記録を正しくとることを通して、その日行った自らの言動や子どもの様子・反応をふりかえり、放課後等デイサービス計画に沿って支援が行われているか、放課後等デイサービス計画で掲げた目標が達成されつつあるか等について支援提供を検証し、支援の改善や自らのスキルアップにつなげていく。

オ 事業所全体の業務改善サイクルへの積極的関与

  • 事業所の目的及び運営方針をはじめとした運営規程の内容を十分に理解して職務に従事する。
  • 従業者は、PDCAサイクルによる事業所全体の業務改善の取組に積極的に関与し、事業運営方針の設定や見直し、業務改善の目標設定とその振り返り、本ガイドラインに基づく事業所の自己評価の実施や利用者の意向の把握等について協力・貢献することが求められる。
  • 放課後等デイサービスを適切に提供する上で、放課後等デイサービスが期待される役割、子どもの発達段階ごとの特性、障害種別・障害特性、関連する制度の仕組み、関係機関・団体の役割、児童虐待への対応、障害者の権利に関する条約等を理解することが重要である。
  • 障害種別や障害特性に応じた支援や発達段階に応じた支援、家族支援等に係る適切な技術を従業者が習得することが、子どもの発達支援や二次障害の予防、子どもの育つ家庭での生活を支える視点から重要である。
  • 従業者の知識・技術の向上は、放課後等デイサービスの提供内容の向上に直結するものであることを理解し、実務能力の向上のために、事業所内で開催される研修等に積極的に受講することが求められる。
  • 知識・技術の習得に関する具体的な計画を立てる等により、将来に対する見通しを持ちながら研修等を受講していくよう心がける。

ア 障害児相談支援事業者等との連携

  • サービス担当者会議に参画する場合においては、障害児支援利用計画案に位置づけられた放課後等デイサービス事業所として期待される役割を確認するとともに、障害のある子どもが、他の子どもや地域社会から安易に隔離されないための配慮等、子どもの最善の利益の観点から意見を述べることが重要である。障害児支援利用計画のモニタリング時には、その時点までの放課後等デイサービスの提供状況を踏まえて、課題への達成度や気づきの点等の情報を積極的に述べることが重要である。

イ 学校との連携

  • 子どもに必要な支援を行う上で、学校との役割分担を明確にし、連携を積極的に図る必要がある。
  • 学校で作成される個別の教育支援計画等の内容を把握しておくとともに、学校から提供された各種の情報を理解し、本人の状態や支援の方法、留意点、学校の行事予定等について把握しておく。
  • 子どもの学校から事業所への送迎に際しては、送迎リストの内容や送迎時の学校側とのルールを事前に把握し、送迎時には身分証明書を学校側の担当者に見せる等確認を取ってから、子どもを事業所に送っていくことを徹底する。
  • 下校時のトラブルや子どもの病気・事故の際の連絡体制について、事前に把握しておく。
  • 医療的ケアの情報や、気になることがあった場合の情報等を、保護者の同意のもと、連絡ノート等を通して学校との間で共有する。

ウ 保育所・児童発達支援事業所との連携

  • 子どもの発達支援の連続性を保障するため、就学前に利用していた保育所等や児童発達支援事業所等で行われていた支援内容について理解しておくことが望ましい。

エ 他の放課後等デイサービス事業所等との連携

  • 発達支援上の必要性により、他の放課後等デイサービス事業所等を併行利用する子どもについて、支援内容を相互に理解しておくため、保護者の了解を得た上で、当該他の事業所との間で、相互の個別支援計画の内容等を理解しておく。

オ 放課後児童クラブ等との連携

  • 地域の放課後児童クラブや放課後子供教室と連携し、併行利用している子どもがいる場合は、放課後児童クラブ等における支援内容について理解しておく。

カ 保護者との連携

  • 学校への子どもの出欠や帰宅の状況について、保護者との連絡のもとに確実に確認することが必要である。
  • 医療的ケアの情報や、気になることがあった場合の情報等を連絡ノート等を通じて保護者と共有する等、日頃から子どもの状況を保護者と伝えあい、子どもの発達の状況や課題について共通理解を持つように努める。また、必要に応じて、家庭内での養育等について、児童発達支援管理責任者の指導の下、ペアレント・トレーニング等活用しながら、子どもの育ちを支える力をつけられるよう支援したり、環境整備等の支援を行ったりすることが考えられる。

2. 子どもと保護者に対する説明責任等

  • 児童発達支援管理責任者の指導の下、保護者が悩み等を自分だけで抱え込まないように、保護者からの相談に応じ、信頼関係を築きながら、保護者の困惑や将来の不安を受け止め、専門的な助言を行うことが必要である。例えば、保護者との定期的な面談(最低限モニタリング時に実施することが望ましい)や訪問相談等を通じて、子育ての悩み等に対する相談を行ったり、子どもの障害について保護者の理解が促されるような支援を行うことが望ましい。
  • 放課後等デイサービスに対する子どもや保護者からの苦情(虐待に関する相談も含む)については、設置者・管理者と児童発達支援管理責任者の指導の下、適切な対応を図る必要がある。

3. 緊急時の対応と法令遵守等

  • 子どもの事故やケガ、健康状態の急変が生じた場合は、事業所で作成された「緊急事態への対応マニュアル」に沿って、速やかに保護者、協力医療機関及び主治医への連絡を行う等の必要な措置を講じなければならない。緊急時における対応方法については理解し、予め設定された役割を実行できるように訓練しておく。
  • 特に、医療的ケアを必要とする子どもに対しては、窒息や気管出血等、生命に関わる事態への対応を理解し、実践できるようにしておく必要がある。
  • 従業者は、災害時避難場所や避難経路等、非常災害に関する具体的計画について十分に熟知し、非常災害時に子どもたちを誘導できるよう、定期的に訓練しておく。
  • 障害種別や障害特性ごとの災害時対応について理解しておき、子どもごとの放課後等デイサービス計画に災害時の対応について記載されている内容を理解しておく。特に医療的ケアが必要な子どもについては、保護者や主治医等との間で災害発生時の対応について、綿密に意思疎通を図っておく。
  • 子どもが犯罪に巻き込まれないよう、事業所が策定する防犯マニュアルの内容を理解し、地域の関係機関・団体と連携しての見守り活動、子ども自身が自らの安全を確保できるような学習支援等の防犯への取組に対して児童発達支援管理責任者の指導の下、取り組む必要がある。
  • 事業所内で実施される虐待防止研修や自治体が実施する虐待防止研修等を積極的に受講する、「障害者福祉施設・事業所における障害者虐待の防止と対応の手引き」を必ず読む等により、児童虐待防止法や障害者虐待防止法の趣旨と通報制度等を理解し、発生予防に努める。
  • 各都道府県で実施する虐待防止や権利擁護に関する研修を受講した場合には、放課後等デイサービス事業所で伝達研修を実施することが重要である。
  • 従業者が虐待を発見しやすい立場にあることを認識し、子どもの状態の変化や保護者の態度等の観察や情報収集により、虐待の早期発見に努める必要がある。
  • 従業者等(実習生やボランティアを含む。)からの虐待(特に性的虐待)は密室化した場所で起こりやすいことから、送迎の車内を含め、密室化した場所を極力作らないよう、常に周囲の目が届く範囲で支援を実施する必要がある。
  • 従業者等(実習生やボランティアを含む。)から虐待を受けたと思われる子どもを発見した場合(相談を受けて虐待と認識した場合も含む。)は、障害者虐待防止法第16条に規定されている通報義務に基づき、支給決定をした市区町村の窓口に通報する。この時に、市区町村に通報することなく、事業所中だけで事実確認を進め、事態を収束させてしまうと通報義務に反することとなるため、必ず市区町村に通報した上で行政と連携して対応を進める必要がある。
  • 保護者による虐待については、相談支援やカウンセリング等で未然防止に努める必要がある。
  • 保護者による虐待を発見した場合は、児童虐待防止法第6条に規定されている通報義務に基づき、市区町村、都道府県の設置する福祉事務所又は児童相談所等へ速やかに通告する。虐待等により福祉的介入が必要とされるケースについては、市区町村等が設置する要保護児童対策地域協議会等を活用しながら、児童相談所、市区町村の児童虐待対応窓口や保健所等の関係機関・団体と連携して対応を図っていくことが求められる。
  • 従業者等(実習生やボランティアを含む。)が自分の体で利用者を押さえつけて行動を制限することや、自分の意思で開けることのできない居室等に隔離すること等は身体拘束に当たり、緊急やむを得ない場合を除き禁止されている。
  • やむを得ず身体拘束を行う場合は、切迫性、非代替性、一時性が要件となるが、身体拘束の検討が必要なケースについては、代替性がないか等について慎重に検討した上で、それでもなお、身体拘束を行わざるを得ない事態が想定される場合には、いかなる場合にどのような形で身体拘束を行うかについて組織的に決定する必要がある。放課後等デイサービス計画に身体拘束が必要となる状況、身体拘束の態様・時間等について、子どもや保護者に事前に十分に説明をし、了解を得た上で記載されていることが必要である。
  • 身体拘束を行った場合には、その様態及び時間、その際の利用者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由等必要な事項を記録する。なお、必要な記録を行っていない場合は、運営基準違反となることを認識しておく必要がある。
  • 感染症の予防や健康維持のため、常に清潔を心がけ、手洗い、うがい、手指消毒の励行、換気等の衛生管理を徹底することが必要である。
  • 感染症又は食中毒が発生した場合や排泄物や嘔吐物等に関する処理方法について対応マニュアルを熟知し、マニュアルに沿って対応する。
  • 食物アレルギーのある子どもについては、医師の指示書に基づき、食事やおやつ提供する際に、除去食や制限食で対応する。
  • 日常の生活・遊びの中で起きる事故やケガを防止するために、室内や屋外の環境の安全性について、毎日点検し、必要な補修等を行って、危険を排除することが必要である。
  • ヒヤリハット事例集作成に協力し、内容を理解し実施する。
  • 従業者は、他人が容易に知り得ない個人情報を知りうる立場にあり、個人情報の適正な取扱いが強く求められる。
  • 関係機関・団体に子ども又は保護者に関する情報を提供する際は、あらかじめ文書により保護者の同意を得ておかなければならない。また、ホームページや会報等に子ども又は保護者の写真や氏名を掲載する際には、保護者の許諾を得ることが必要である。
  • 従業者は、その職を辞した後も含めて、正当な理由がなく業務上知り得た子どもや保護者の秘密を漏らしてはならない。